前回、酸素の豊富な地上に暮らす私たちは、その酸素をエネルギーの生産に利用する一方で、その酸素の持つ毒性で、組織が傷つき、老化の原因となることをお話しました。
1.活性酸素と老化
では、酸素、特に活性酸素は、私たちの身体にどのような老化現象を起こすのでしょう?
まず、一番気になる皮膚についてお話ししましょう。
皮膚は、図に示すように、太陽からの紫外線を直接受ける部分で、活性酸素の沢山発生する部分です。
真皮まで届く有害な紫外線は、UVAと呼ばれる315~400ナノメートルとUVBと呼ばれる280~315ナノメートルの紫外線があります。
UVBは日焼けを起こす紫外線で直接皮膚にダメージを与え、UVBは皮膚の深くまで浸透しシミやシワの原因になると考えられています。
このように、紫外線は皮膚表面を通り抜け、皮膚細胞内の水分や活性酸素、過酸化水素などを刺激して、最も有害なヒドロキシラジカルと呼ばれる強力な酸化物質を大量発生させてしまいます。
このヒドロキシラジカルという物質、皮膚の弾力を保つ大事なたんぱく質コラーゲンなどを破壊します。
その結果、皮膚のハリがなくなり、しわの原因となります。
2.活性酸素と酵素
次に、皮膚と同様、紫外線が透過しやすく活性酸素発生量の多い部分が目です。
目には、活性酸素の影響をおさえるための酵素が豊富に含まれています。
しかし、歳をとるとその酵素の量が減り、活性酸素の影響をおさえられなくなります。
そうすると、水晶体が濁って白内障になりやすいと考えられています。
3.免疫の異常で活性酸素
免疫の異常で活性酸素が増えて組織を破壊することがあります。
白血球が自分の細胞を敵とみなし、活性酸素を撒き散らして攻撃するため、炎症や痛みが起こります。ひじなどの関節が痛むリウマチ性関節炎がそうです。
関節には活性酸素を消去する酵素などが少ないため、集中的にやられてしまいます。
加齢と共に酵素の量が減ってきますので、老人に多い病気です。
4.活性酸素と脳の老化、認知症
その他、活性酸素は、脳の老化、認知症とも深い関わりがあります。
アルツハイマー型認知症は原因が不明とされています。
しかし、活性酸素によって脳の脂質が酸化されてできる「老人斑」が見られることから、活性酸素が原因の一つではないかと疑われています。
脳血管性認知症の場合も、原因は動脈硬化にあり、やはり活性酸素が原因のい一つとして大きく関わっていると考えられています。
5.活性酸素は体内の老化と密接な関係
このように、活性酸素は、体内での老化と密接に関わっているのです。
しかし、私たちの身体にはこの活性酸素を消去するシステムが備わっています。
それが、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)などスカベンジャーと呼ばれる酵素です。
活性酸素を消す酵素は、ヒトの場合40歳を超えた当たりから減少します。
また、酸素の豊富な地上に住む生物の寿命は、この酵素の量と関係していることが分かってきています。
次回は、寿命と活性酸素を消す酵素の関係について、お話したいと思います。